膀胱炎
排尿時の違和感・痛み、頻尿、下腹部痛の症状
大腸菌などの細菌が尿管から入り込んで膀胱内で増殖してしまうことで、粘膜が炎症を起こしてしまう病気です。
女性の5人に1人が経験するといわれている、身近な病気です。
主な症状
下腹部の不快感や痛み、排尿時の痛み、そのほか尿トラブル(頻尿、尿意切迫感、残尿感、尿失禁、血尿)など、さまざまな症状がみられます。
発症の原因
過労やストレス、更年期障害などによって体の抵抗力が低下することで発症する場合があります。
膀胱炎は、大きく分けて、急性膀胱炎と慢性膀胱炎の2つに分類されます。
基本的にはどちらも、抗菌剤や抗生物質を投与する薬物療法による治療が行われます。
急性膀胱炎
女性に多い膀胱炎で、5人に1人が経験するといわれています。女性は男性よりも尿道が短く、肛門や膣が近いという点で細菌の侵入リスクが高くなります。
慢性膀胱炎
糖尿病や膀胱結石、尿路結石など、他の病気が原因で発症するもの、そして原因が明らかでない膀胱炎もあります。
原因となる病気が想定される場合は、まずはその病気の治療を優先します。
慢性膀胱炎は、治療が長引く傾向があります。長期間の抗生物質の服用が、さらなる難治性の膀胱炎を招くこともあるため、注意が必要です。
原因がわからない場合は、さらに詳しい検査が必要となります。
過活動膀胱/切迫性尿失禁
急に我慢できないような尿意が起こる症状
過活動膀胱は、自分の意思とは関係なく、膀胱が勝手に収縮してしまう病気です。
昼間頻尿や夜間頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁などの症状に悩まされます。
病気の引き金となるのは「排尿筋が過剰に活動してしまう」という点があげられます。
その要因としては、神経因性(神経障害によるもの)と、非神経因性(神経障害ではないもの)があります。
神経因性
脳血管障害、脳障害、脊髄障害
非神経因性
骨盤底筋のゆるみ
多くの方が悩まれている過活動膀胱は、現在ではさまざまな改善法や治療法があります。
原因が特定できないケースもありますが、考えられる要因に合わせた治療を選択することで、症状は軽減できます。
切迫性尿失禁
急に起こる抑えきれない尿意があり、我慢できずに尿がもれてしまう症状です。腹圧性尿失禁と比べて、尿の量が多く、大量に漏れてしまう場合も少なくありません。
切迫性尿失禁の症状をお持ちの方は、尿意を感じると急に出てしまうことが不安となり、頻繁にトイレに行くようになります。そのため、外出時や乗り物に乗っているときに、ストレスや不安にかられてしまうことが多いです。
切迫性尿失禁の原因は、残念ながら解明されていません。脳の指示通りに膀胱が動かずに起こってしまうものですが、その多くのケースはメカニズムが不明です。
膀胱や尿道などの泌尿器に炎症が起こっている場合、知覚神経が過敏になって起こるケースも見受けられますので、まずは一度、医療機関を受診してください。
その他の尿失禁
まずは医師による正確な診断から
腹圧性尿失禁
40歳以上の女性で、3人に1人が悩まされているといわれている尿失禁です。
尿失禁患者さんでは約半数の方にみられます。
腹圧性尿失禁は「お腹に強い圧力がかかる動作時に、尿がもれてしまう」という症状です。よくあるのは、咳やくしゃみなどの生理現象、笑う・重いものを持ち上げる・坂の上り下りなどの些細な日常動作、そしてスポーツがあげられます。日々の楽しみや趣味の時間を過ごす中で、尿失禁の不安を抱えながら過ごさなければならないのは、とてもストレスがかかります。
腹圧性尿失禁は、骨盤内の膀胱や尿道、子宮を支えている骨盤底筋がゆるみ、腹圧に耐えきれなくなってしまうことで起こります。また、腹圧尿失禁のうち約30%程度の方が、切迫性尿失禁を合併しているケースもあります。
その他の尿失禁
溢流性尿失禁
脳梗塞などの脳神経の病気や圧迫骨折などによる膀胱神経障害、特定の薬剤の副作用(抗精神病薬や過活動膀胱治療薬)によって膀胱の知覚・収縮力が極端に低下し、膀胱内にたくさんの尿が溜まっても上手く排尿できず、結果的に膀胱から溢れ出る形で起こる失禁です。
頻尿や失禁など出現する自覚症状は切迫性尿失禁と似ていますが、治療方法が全く異なるため医師による正確な診断が必要となります。
尿トラブル
日常生活に支障をきたさないうちに、早めに対策を
泌尿器のお悩みというと「高齢者の悩み」というイメージを持たれている方もいらっしゃると思います。しかし、尿もれは30〜40代の比較的若い世代の女性に最も多いお悩みです。出産後、約6割の女性が尿もれを経験しているといわれています。
排尿に関するお悩みは、「恥ずかしい」という理由から、泌尿器科への受診をためらう方も少なくありません。しかし、放っておくと生活の質を損なうこともあります。日常生活に支障をきたさないうちに、早めに対策することが大切です。
尿トラブルの主な原因
骨盤底筋のゆるみ
妊娠、出産による尿もれを経験する機会は、主に2回です。
1回目は妊娠後期、出産が近くなると胎児の頭部が膀胱を圧迫し、尿もれや頻尿が起こりやすくなります。
2回目は出産後です。出産時には、臓器と骨盤を支えている骨盤底筋と呼ばれる筋肉の繊維が大きく切れ、弛むようになります。それによって、出産直後から尿もれの症状が出るようになります。
妊娠・出産が原因で起こる尿もれは、出産後、半年〜1年で落ち着いていきます。
しかし、重症の場合はさらに長く尿もれに悩まされることとなり、適切なケアが必要です。
更年期に起こりやすい尿トラブル
妊娠・出産経験のない女性であっても、骨盤底筋は加齢によってゆるみ、更年期を迎える頃にはさらに症状が複雑になっていきます。
女性ホルモンのエストロゲンは、尿道や骨盤底筋の張りや弾力を保つ働きがあります。
しかし、更年期といわれる閉経を迎える前後10年(45〜55歳あたり)の時期に、このホルモンは急激に減少してしまいます。
それによって、尿失禁や頻尿、排尿や排便の障害を引き起こしやすくなります。
尿トラブルの検査
一般的なながれ
まずは問診票へご自身の症状を記載していただきます。その後、採尿へ移ります。
尿トラブルの症状を診断する基本となるのが「尿検査」です。
膀胱結石や膀胱癌など他の病気の可能性も含めて診断していきます。
その後、超音波による画像検査・尿流量検査を併用することで失禁の原因を見極めていきます。