尿トラブル
尿トラブルは、体からの重要なサイン
男性の尿トラブルは、40代から見られるようになり、加齢とともに増加していきます。
ご相談の多いお悩み、症状
- トイレが近くなる
- 尿ができるときに勢いがない
- 残尿感がありスッキリしない
- 尿が出にくい
などがあげられます。
年代によって、これらの症状を引き起こす原因が異なる場合があります。
尿トラブルの主な原因
前立腺に起こる障害
40〜50代の男性では、慢性前立腺炎という病気が考えられます。前立腺が細菌感染や血行不良によってむくんでいる状態です。
60代からは、前立腺がふくらんで起こる「前立腺肥大症」が疑われます。
前立腺とは、男性特有の臓器です。精巣から分泌されるテストステロンの影響を受けて、加齢に伴い徐々に大きくなっていきます。
前立腺の中央を尿道が通っているため、前立腺が腫れたり大きくなったりすると尿道が圧迫されます。
尿が出づらくなる(排尿困難)だけでなく、膀胱内に尿が残る(残尿)ようになって負担をかけてしまいます。
はじめはあまり気に留めていなかった尿トラブルでも、次第に症状が目立つようになり、日常生活に支障をきたしてしまうケースは少なくありません。夜、尿意を感じて何度も目が覚めてしまい睡眠不足になっている方は多いものです。
また、急な尿意によって頻繁にトイレにいかなければならず、仕事に支障が出てしまったり、気づけば人付き合いや外出を避けるようになってしまったなどのお悩みも少なくありません。
QOL(生活の質)が著しく低下してしまう前に、少しでも症状が気になるようなら、遠慮なく泌尿器科を受診してください。
尿トラブルの検査
一般的なながれ
まずは問診票へご自身の症状を記載していただきます。その後、採尿へ移ります。
尿トラブルの症状を診断する基本となるのが「尿検査」です。他の病気の可能性も含めて診断していきます。
その後、超音波による画像検査と尿流量測定検査を実施し、原因を判断していきます。
詳しい検査(男性)
PSA検査
男性の尿トラブルの原因となる前立腺肥大症の診断をするための初期検査です。
PSAは前立腺特異抗原とよばれ、前立腺の細胞から分泌されるタンパク質です。血液中に取り込まれている微量な物質の値を測定します。
PSA検査で高い数値を示した場合は、前立腺癌の可能性を疑い超音波検査・直腸診察が行われます。
そのほかの検査
前立腺癌や手術適応の前立腺肥大が疑われる方は、より専門の医療機関にご紹介させていただく場合があります。
さらに詳細な診断をするために、画像検査に進みます。
前立腺肥大症・前立腺がん
前立腺とは
前立腺は男性だけが持つ臓器で、精液の一部を作る役割を担います。大きさは「くるみ」ほどの小さめな臓器です。
前立腺の主な病気としてあげられるのが、前立腺肥大症と前立腺がんです。
前立腺肥大症
前立腺が数十〜数百グラム以上も大きくなってしまう病気を前立腺肥大症といいます。
明確な原因はわかりませんが、加齢や遺伝、生活習慣の乱れ(肥満、過度な喫煙や飲酒)が要因として考えられています。
また、運動不足による前立腺の血行不良も、影響を受けます。
病気を知るきっかけは、やはり尿のトラブルが多いです。
ご相談の多いお悩み、症状
- 頻尿:トイレが近くなる
- 夜間頻尿:夜、尿意で何度も目が覚める
- 排尿遅延:すぐに尿が出てこない
- 残尿感:排尿後も、残っている感じがする
- 尿勢低下:尿に勢いがない
などがあげられます。
前立腺肥大症の治療では、一般的には保存療法(治療や症状改善、緩和を目指す治療)として薬物療法が検討されます。
しかし、何らかの合併症や薬物療法抵抗性の場合は、手術治療が行われる場合もあります。
前立腺がん
男性特有のがんである「前立腺がん」は、早期発見で生存率が高いがんです。
5年後生存率(がんと診断された人が5年後に生きている確率)は93%と最も高く、予後の良いがんといえます。
前立腺がんは、前立腺の外腺にできやすい悪性腫瘍です。
目立った初期症状はなく、がんが進行し大きくなっていくと、尿トラブルの形で症状が出ることがあります。
気になる症状や違和感を覚えたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。
治療法は、がんの病期や悪性度、そして患者さんの年齢や合併症の有無によって異なります。
前立腺炎
前立腺が細菌に感染したり、血行不良になったりすることで起こる炎症です。前立腺炎には、急性前立腺炎と慢性前立腺炎があります。
いずれも発症すると、排尿する際に痛みを感じたり、頻尿・尿閉(排尿しようと思っても出てこない)が起こったりすることが多いです。
急性前立腺炎
主な原因は、大腸菌が尿道から侵入して発症する感染症です。38℃以上の高熱が出て、前立腺に腫れの症状がみられます。
一般的には、薬物治療(抗菌剤の内服、点滴など)が行われます。
慢性前立腺炎
細菌感染による発症もありますが、そうでないケースもあります。
長時間のデスクワーク等、前立腺が圧迫される日常動作よる血行不良、そのほか疲労やストレスなどで体の免疫力が衰えている際に発症することがあります。
急性と同様に排尿障害が見られますが、下腹部(または陰茎や肛門周囲)に鈍い痛みや不快感、腰痛といった形で出現することがあります。
また、精液に血が混ざることもあります。
一般的には、薬物治療(植物製剤や場合によっては抗菌薬内服)が行われますが、前立腺肥大症に準じた治療や運動指導が行われる場合もあります。
その他の病気
尿路上皮がん(腎盂がん・尿管がん・膀胱がん)
腎臓がんは、約8割が腎細胞がんと尿路上皮がんといわれています。尿路上皮がんは、男性や60歳以上の高齢者に多いがんです。
腎臓内の尿が集まる腎盂(じんう)から尿管、膀胱、尿道の一部まで、尿路の内側は尿路上皮とよばれる粘膜でつながっています。
一つの器官でがんが見つかると、関係がある器官のさまざまな場所でがんが見つかることがあります。
症状としては、排尿時の痛み、頻尿、下腹部の痛みや違和感もみられます。
また、排尿時に肉眼で見てわかるほどの血尿(血が混じった尿)が出ることもあるため、それに驚いて医療機関を受診し、早期発見されるケースも多いです。
尿路上皮がんの原因は、喫煙や頭痛薬などの長期服用、抗がん剤の使用からも発生すると考えられています。
がんの転移がない場合と、転移がある場合によって治療法は異なります。
精密検査や高度な治療が必要と判断した際は、専門の医療機関をご紹介させていただきます。
急性尿道炎
主に性行為から細菌が尿道に侵入して起こる感染症です。男性の場合、最も多いのがクラミジア菌によるクラミジア尿道炎です。
症状が軽いことも多くパートナー同士で移し合ってしまうため注意が必要です。
特に女性の感染症は不妊症の原因にもなります。感染した際は双方の検査・治療が必要になります。
クラミジア尿道炎は、感染してから発症するまでの潜伏期間が1〜3週間で、尿道の痛みが伴わない場合もあります。
クラミジアによる尿道炎の場合、内服薬を1〜2週間ほど服用すると治ります。3〜4回程度の通院が一般的です。
男性更年期障害
更年期障害というと女性のイメージが強いですが、男性にも更年期障害があります。
LOH症候群とよばれ、男性ホルモン(テストステロン)が減少することで起こる病気です。
泌尿器の症状としては、男性機能の低下(ED)があげられます。当院ではEDの治療も行なっております。
男性更年期障害は個人差も大きく、全く気にされない方も多いですが、生活に支障をきたす前に早めにご相談ください。