尿路結石

  • HOME > 
  • 尿路結石

尿路結石の病態と症状

尿路結石とは

尿の通り道である、

  • 腎盂(じんう)
  • 尿管
  • 膀胱
  • 尿道

をまとめて「尿路」といいます。

この尿路に結石とよばれる「石」ができて詰まり、さまざまな症状を引き起こす病気です。

尿路結石にはいくつか種類があり、シュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムなどのカルシウム結石が全体の80%以上を占め、10%が尿酸結石、残りがその他の結石となります。

尿路結石の代表的な症状

突然背中から脇腹にかけて起こる激しい痛み(せん痛発作)です。
また冷や汗が出たり、嘔吐に苦しんだりする方も少なくありません。

この「せん痛発作」は夜間や早朝に起こることが多く、3〜4時間持続します。
腎盂腎炎を併発すると、38〜40度ほどの高熱が出ることもあります。

下部尿管に結石ができると、これらの痛みに合わせて、膀胱刺激症状(頻尿や残尿感など)が起こります。

結石が動いて尿管が傷ついてしまうと、血尿の症状も見え始めます。
痛みは間隔をおいて何度も発症しますが、発作がおさまると、痛みは嘘のように消えていきます。

尿路結石が起こる原因

動物性脂肪中心の食生活

尿路結石の原因はさまざまですが、第一に挙げられるのは「動物性脂肪中心の食生活」によるものです。
動物性脂肪は、結石の生成を促すことがわかっています。

戦後の日本では、食生活の欧米化が進み、伝統的な和食から次第に動物性脂肪を過剰に摂取するような食事へと移行しました。
それに伴い、上部尿路結石が急激に増加しました。

カルシウムの不足・過剰摂取

腸管内にカルシウムがあると、シュウ酸と結びついてシュウ酸カルシウムの結晶を作ります。
これは水に溶けにくい性質があり、体内には吸収されずに便として排泄されます。
そのため、尿中に排泄されるシュウ酸は減少し、尿路結石ができにくくなります。

ただし、カルシウムを過剰に摂取すると、尿中のカルシウムが増えてしまい、これもまた結石ができる要因となります。
摂取が不足しても過剰でも、結石をつくる原因と考えられます。

上部尿路結石・下部尿路結石ともに、結石成分はカルシウム結石が断然多いです。

痛風・高尿酸血症

痛風(高尿酸血症)は尿酸結石を発症しやすい傾向にあります。
尿酸濃度が高くなると、尿の酸性度が高くなり、尿酸が尿に溶けにくくなることで、尿酸の結晶ができます。それが核となって結石が生じます。
尿酸排泄量を増やすタイプの痛風の薬を飲んでいる方にも起こりやすくなります。

女性ホルモンの減少

男性は40代をピークに、その前後の世代が結石を発症しやすくなっています。

一方、女性は更年期を過ぎると尿路結石にかかりやすくなります。
これは更年期を迎える頃に起こる、女性ホルモンの減少が要因としてあげられます。

女性ホルモンの急減な衰えによって起こる不調の中に、骨粗鬆症があります。
尿路結石はこの骨粗鬆症が誘発していると考えられています。
骨粗鬆症は骨代謝(古い骨が壊され、新しい骨を生成する)が乱れる病気です。

更年期をすぎて女性ホルモンが減少すると、骨が壊れるスピードに骨の形成が追いつかない状況になります。
骨に含まれているカルシウムは、どんどん血中に溶け出してしまいます。

血液中のカルシウム濃度は一定に保たれ、過剰に溶けて不要となったカルシウムは尿として排出されます。
これがカルシウム結石を誘発するのです。女性にとっては、この尿路結石も、更年期障害の1つといっても過言ではありません。

その他の原因

遺伝的要因や、代謝異常、細菌感染(尿路感染症)、薬剤の長期服用も、尿路結石を誘発する要因として考えられています。

尿路結石の検査と診断

病気の早期発見・早期治療

どのような病気もそうですが、早期発見・早期治療がとても大切です。体からのサインを見逃さないようにしましょう。

放置すると危険な尿トラブル

目で見てわかる血尿や、強い痛みを伴うケースであれば、医療機関を受診される方は多いと思います。
しかし、違和感程度であれば「様子を見てみよう」と考えてしまう方は少なくありません。

受診を先延ばしにした結果、結石が成長してしまい、辛く苦しい経験をされる方はたくさんいらっしゃいます。
何か変、と感じる尿トラブルがあったら、早めに受診しましょう。

ご相談の多い尿トラブル
  • 残尿感がある
  • 排尿痛がある
  • トイレが近い
  • 尿が濁っている
  • 尿の色がおかしい
  • 尿の出が悪くなった
  • 尿の量が極端に減った

    など

    また、

    • 体が浮腫んでいる
    • 背中や腰に重苦しさを感じる
    • 下腹部に鈍痛を感じる

    など、これらの症状も注意が必要です。

    当院で行われる検査

    血液検査

    血液の成分は腎臓の機能と密接な関係があります。
    腎機能障害の有無やその程度を確かめるためには、血液検査で血液の成分を調べることはとても重要です。

    血液検査では尿酸値も計測されます。尿酸値は高尿酸値症の有無を確認するのに有効です。高尿酸血症は、痛風の原因になるだけでなく、尿が酸性に傾くために尿酸結石ができやすくなります。

    尿検査

    結石は元々、尿の成分が固って結晶化するものです。尿検査は尿路結石の診断と再発防止には欠かせません。
    健康な尿は、黄色っぽく澄んでいるのが特徴です。

    赤みを帯びていたり、白っぽく濁っていたりする場合は、どこかに病気があることを示しています。
    以上のように、尿は色や透明度だけでもかなりの情報を得ることができます。

    画像検査

    結石の初期診断では、レントゲン検査(腎尿管膀胱撮影)や超音波検査が行われます。

    レントゲン検査(腎尿管膀胱撮影)

    腎尿管膀胱撮影はKUB検査ともいわれ、腎臓から尿管、膀胱までを1つの写真としてX線撮影するものです。
    結石の位置、大きさ、数などを調べることができます。ただし、結石の診断率は約70%程度といわれています。

    超音波検査

    KUB検査では鑑別が困難なケースや結石の有無が確認できない場合、さらに超音波検査を行います。超音波を体の表面にあてて、体内の組織から跳ね返ってくるエコー(反射波)を画像化します。

    KUB検査では写らない尿酸結石やシスチン結石も確認できます。また尿の流れがどの程度滞っているか、尿管や腎臓がどのような状態になっているかも判別できるため、さまざまな病気の診断に役立ちます。

    そしてなんといっても、痛みや副作用がないという点が最大のメリットです。患者さんのお体に負担をかけません。

    尿路結石の治療

    尿路結石の治療は大きく2つに分けられます。1つ目は「保存的治療」、2つ目は「侵襲的治療」です。
    結石の大きさや種類、場所、腎機能障害の有無や尿の通過障害の有無などによって、最適な治療方法を選択してきます。

    保存的療法

    結石が尿と共に自然に排泄されるように促す(自然排石)治療です。当院で行われる治療は、この保存療法となります。

    主に石が小さく、尿の通過障害や腎機能の低下がないときに選択されます。
    この保存的療法は、自然排石促進法と薬物療法に分類され、この両方を併用することもあります。

    自然排石促進法

    水分摂取によって自然な排石を促します。患者さんの体への負担が少ないのが最大のメリットです。
    排泄をしやすくするためにα遮断薬などを併用することもあります。

    自然排石促進法は、排石されるまでに数ヶ月の時間を要することもあり、出るのを待っている間に合併症が起こってしまうリスクもあります。

    薬物溶解療法

    薬物によって結石を溶かし、排泄を促す方法です。
    尿をアルカリ性にすると溶ける性質がある尿酸結石やシスチン結石などは、この薬物療法が適用されます。

    しかし、尿路結石の大半を占めるカルシウム結石には、薬物療法の効果は期待できません。
    自然排石促進法を試みてもなかなか排石されずに、せん痛発作や尿路感染症、水腎症などを発症する兆候が見られるとき、また薬物を使っても十分に結石が溶けない場合は、侵襲的療法への切り替えを検討します。

    侵襲的療法

    侵襲とは「体への負荷がかかる」ことを指します。つまり手術などで積極的に結石を除去する治療です。
    当院では、この治療法は行なっておりませんので、専門的な医療機関をご紹介させていただきます。