痛風・高尿酸血症の特徴
高尿酸血症とは
私たちの体では、絶えず細胞の新陳代謝やエネルギー消費が行われています。この活動によって血液中に生成される物質に「尿酸」があります。尿酸はいわば体の老廃物であり、通常は尿や便と一緒に体外へと排泄されます。
しかし、尿酸は水や体液に溶けにくい特性があるため、過剰に増えてしまったり、腎臓による排泄機能が低下したりすると、血液中だけでなく体中にたまってしまいます。この尿酸の量が、基準値(7.0mg/dl)を超えて多くなっている病態を、高尿酸血症といいます。
痛風とは
尿酸値が高い状態をそのままにしておくと、やがて過剰となった尿酸が関節に蓄積されます。白い針状の結晶(尿酸塩)となって関節内に沈着し、痛風発作が起こります。発作が起こると激痛に襲われ、放置すると長い場合では数年にかけて悩まされることもあります。
高尿酸血症から痛風への進行過程
痛風発作までの過程には、大きく3つの段階があります。
- 無症候性高尿酸血症期
- 痛風間欠期
- 慢性痛風期
以上の3つです。
1:無症候性高尿酸血症期
尿酸値が基準値を越えていても、この時期は痛み等の自覚症状らしきものは何も起こりません。
そのため、病院や健康診断等で発覚するケースがほとんどです。
たとえ症状がなくとも、高尿酸血症であることは変わりがないため、痛風予備軍といえます。
食事や運動などの生活習慣の見直しが必要です。
2:痛風間欠期
痛風発作がときどき起こる時期です。1週間程度で治ることも多いですが、適切な治療を受けないと、繰り返し何度も発症し、長期化する場合があります。
尿酸値を下げる治療を行うことでそのリスクは軽減できますが、放置すると発作の間隔も短くなり、激痛に悩まされる頻度も次第に増えていきます。
また、この時期は高尿酸血症特有の合併症を起こしやすい時期であるため、注意が必要です。早めに対処して、症状の悪化を防ぎましょう。
3:慢性痛風期
適切な治療を受けなかったり、治療を途中で中断したりする方は、高い確率で症状が長引き慢性化していきます。
尿酸塩を中心とした肉芽組織(コブ)ができるようになったり(慢性結節性痛風)、既にさまざまな合併症が進行している可能性が高いです。
この段階では尿酸値がとても高い状態となっており、正常値と比べると数倍(ひどい方は数十倍)にもなっている場合があります。
痛風・高尿酸血症の検査と診断
健康診断や人間ドックで尿酸値を指摘された方(基準値より高い数値が出た方)は、できるだけ早く医療機関で検査や治療を受けることが大切です。
まずは問診から
問診では、現在の症状、もし痛風発作を起こしていたら、その時期や場所、症状などをお伺いします。また、痛風は、高カロリー食やアルコールの大量摂取、運動不足、精神的ストレスなどによって引き起こされやすいため、患者さんの生活習慣についても詳しくお尋ねします。
さらに、腎臓病や高血圧症、脂質異常症などのほかの病気を患っていないかどうか、チェックが必要です。家族の病歴なども、正確な診断をするにはとても重要なポイントです。
痛風・高尿酸血症の基本的な検査
痛風・高尿酸血症の検査は、
- 健康診断などで尿酸値が高めといわれた場合
- 痛風発作を起こして医療機関を受診した場合
上記によって、検査の内容が異なってきます。
高尿酸血症や痛風の疑いがある場合
検査は「血液検査」と「尿検査」が中心です。まずは尿酸値を測定することから始まります。
尿酸値は常に一定の数値を示すわけではありません。年齢や性別によっても異なり、その日の体調や生活環境でも変動します。
そのため、数回計測してその平均値を確認していきます。尿酸値が7.0mg/dlを越えていれば、高尿酸血症と診断されます。
腎機能や痛風(高尿酸血症)のタイプを調べる検査
痛風(高尿酸血症)は原因によって幾つかのタイプに分けられます。
治療方針を決定する上での指標にもなりますので、事前にタイプを調べます。
タイプを調べる検査
- クレアチン クリアランス
- 尿酸クリアランス検査
- 肝機能検査
- 血液や尿の酸性度検査
など
痛風発作が起きたときの検査
血液検査
痛風発作(急性痛風関節炎)を疑う症状がある場合には、血液検査によって炎症の有無を調べます。
体内に炎症があれば、血液中の物質(白血球や赤血球、たんぱく質など)に炎症性の変化がみられます。
CRP測定
体内で炎症が起こると増えるCRP(反応性たんぱく質)を測定する検査。
血沈(赤沈)検査
赤血球の沈むスピードを測る検査。速度が速いほど、炎症が起きている可能性が高くなる。
しかし、以上の検査だけでは、炎症の確認ができても、発作の原因までは特定することができません。
よって、次のステップとしては、発作が間違いなく痛風によるものであるかを確かめるための検査を実施します。
関節液検査
発作がひざなどに生じている場合、他の疾患と区別するために行う検査。
関節内に細い針を刺して関節液を吸引し、尿酸の結晶の有無を調べる。
痛風結節生検
親指や肘の関節などにコブ(痛風結節)が認められる場合は、その組織を採取して調べる。
画像検査
関節X線検査
炎症を起こした関節部分をX線で撮影し、骨の変化を調べる。尿酸塩がみられると、骨の一部が欠けて見える。
超音波(エコー)検査
体内に超音波を発振し、体内組織に反射して戻ってきたエコーを画像化する。
関節に尿酸塩結晶がどのくらい蓄積されているのかを調べることができる。
X線検査
超音波(エコー)検査
治療方針を決めるための検査
検査によって痛風であることが確定したら、次は今後の治療方針を決定するために、痛風の原因を特定していきます。
痛風には、大きく分けて3つのタイプに分類されます。
- 腎負荷型
- 尿酸排泄低下型
- 混合型
まずは、患者さんがどのタイプなのかを調べます。
他の病気との識別
痛風と症状が似た病気と区別するために、それぞれの病気に合わせた検査・鑑別を行います。
間違われやすい病気
- 関節リウマチ
- 変形性膝関節症
- 偽痛風
- 外反母趾
合併症の有無を調べる検査
合併症を調べる基本的な検査として
- 尿検査
- 血液検査
を実施します。
合併症がある場合は、症状の進行に合わせて専門的な治療が必要です。
痛風・高尿酸血症の治療
痛風発作の治療
痛風は激しい痛みが起こるため、患者さんの生活の質が著しく低下します。まずは炎症を抑えて、痛みを和らげるための治療が最優先となります。
炎症は薬物療法によって治療します。炎症を抑える薬にはさまざまな種類があり、それぞれメリットとデメリットがあります。お身体の状態に合わせて選択していきます。痛風発作が頻発する時は、再度治療法を検討する必要があります。
また、一度痛風発作を経験された方は、2度目以降の発作時に前兆のようなものを感じる方もいらっしゃいます。その際に、発作を予防する目的で使われる薬もあります。ただし、副作用もあるため、使用には十分に注意が必要です。
高尿酸血症の治療
まずは生活習慣の見直しと改善が必要です。尿酸値の高さや痛風発作の有無、合併症の有無によって治療方針を決定し、適切な治療を進めていきます。
尿酸値を下げるために、薬物療法が行われます。薬には大きく分けて、2つの種類があります。1つは体内での尿酸の生成を抑える薬(尿酸生成制御薬)です。もう1つは、体内で作られる尿酸の排泄を促す薬(尿酸排泄促進薬)です。痛風(高尿酸値症)のタイプによって、2種類の薬を使い分けていきます。
尿酸降下薬は、はじめは少量からスタートし、経過を見ながら用量を徐々に増やしていきます。痛風発作は尿酸値が上昇しすぎると発症しますが、実は尿酸値が急に下がった場合でも発症することがあります。これを尿酸値の下降型発作といいます。
そのため、薬は必ず医師の処方通りに服用することが大切です。飲み忘れや、薬の量・飲む時間の管理をおろそかにすると、症状が改善されないどころか事態は悪化します。薬のリバウンドによって尿酸値が不安定になってしまい、腎機能などを悪化させてしまうリスクがあります。
合併症を防ぐ治療
高尿酸血症は、さまざまな合併症の原因となります。ほとんどの痛風患者は合併症を持っていると言っても過言ではありません。
発症リスクのある合併症
- 痛風性関節炎
- 腎障害
- 尿路結石
- 高血圧症
- 脂質異常症、高脂血症
- 耐糖能異常
など
とくに高尿酸血症が進行し、痛風の症状が表れたときには、高血圧や脂質性異常症などの生活習慣病も進行している可能性が考えられます。
中でも怖いのは、腎障害などの腎臓病です。尿酸塩結晶が腎臓に蓄積されると、腎機能の低下が起こります。それによって腎不全になると、人工透析が必要となる場合もあります。
もし、合併症を起こしている場合は、尿酸値のコントロールをしながら痛風の治療を行い、それぞれの病気の治療も同時に進めていくことが必要です。
痛風・高尿酸血症の発症予防
尿酸値を上げない生活
痛風(高尿酸血症)の予防には、生活習慣の見直しが必要不可欠です。
前述した「合併症」であげられる病気の共有原因には、
- 食べ過ぎ、飲み過ぎ
- 高脂肪食
- 運動不足
があげられます。
それらを改善するためにも、まずは尿酸値を上げない生活を心がけることが重要です。
- 食生活を見直し、肥満を解消する。
- アルコール飲料を控える。
- 水分を十分に摂る。
- 適度な運動をする。
- ストレスと上手に付き合う。
尿路管理
腎臓から尿管、膀胱、尿道までの通り道を尿路といいます。
高尿酸血症になると、腎臓や尿路に障害が起こりやすくなります。これは、尿に溶けなかった尿酸が結晶を作ってしまうことが原因です。
これらの尿酸の暴走を防ぐために行われる尿路のケアが、尿路管理です。
尿路管理のポイント
大きく2つのポイントがあります。
1:尿の量を増やす
排尿の量が増えると、尿酸の排泄も増え、尿酸値が下がります。尿量のコントロールは、尿酸値をコントロールするうえでとても重要です。
水分を補給すればよいという問題ではありませんので、当たり前ですがアルコールや糖分・プリン体を多く含むものは避けなければいけません。
そのほかにも、血糖値の上昇につながる加糖飲料をはじめ、紅茶やコーヒーも好ましくありません。水分補給には、水やお茶(緑茶、烏龍茶、麦茶、無糖の紅茶)がベストです。
2:尿の酸性化を防ぐ
尿の酸性化を防ぐためには、栄養バランスの良い食事が重要です。
アルカリ性の食品(野菜や海藻類、きのこなど)を積極的に摂取し、高プリン体食品(鶏レバー、白子、一部の魚介類など)は控えるようにしましょう。
また、水分補給を兼ねてという点では、アルカリ性食品でもある牛乳(特に低脂肪乳)や、ビタミンやミネラルを豊富に含む青汁などが適切な飲料といえます。